日記[2]───じーえふママが生放送するらしい
母の命令でコンビニに向かっている。
今夜焼肉をするにあたって千円渡すから酒を買ってこいとお使いに出されてしまった。クーラーの効いた部屋で布団を被るという快楽にもう少し溺れていたかったが、私の分の酒代も出してくれるというのであれば行くしかないだろう。買う酒は決まっている。ビールだ。友人に「なんとなくイメージが悪いから」というふやけた理由でビールを禁止されているのだが、焼肉には問答無用でビールである。ここを曲げてしまっては、私は私でいられなくなってしまう。友人がこの文章に気づかないことを祈る。
ところで冒頭に述べた「母」とは、私の母のことである。
この一見「Aとは、Aである」という簡潔すぎて逆に哲学的に見えるような注釈を挟まなければ、私のことを知る一定数がむしろ混乱してしまうというのは実に困った状態だ。面倒がくさい。それもこれも「じーえふママ」が悪い───と言いたいところなのだが、「元凶」という意味で言えば私が悪いのでこれがまた面倒くさい。
じーえふママとは、一息に述べてしまうなら「私のお古のアバターを使って活動している奇天烈な女」である。私が言う「母」はじーえふママではなく私の実母のことだ。
ことの始まりは五月末。なんとなく、「今自分が使っているアバター(じーえふちゃん)を誰かに渡してバーチャルYoutuberとして活動してもらったら面白そう」という発想をそのまま実行し、結果生まれたのが彼女である。彼女が「じーえふママ」を名乗っているのは私の母を意味しているのではなく、「全ての人類の母になりたい」という意思の表れらしい。彼女がたびたび発する「我が子〜」という挨拶もその一端である。
オーディション自体も(身内からの応募による大喜利で)大層盛り上がり、そして合格者である彼女自身のインパクトによってその名前は広く知れ渡った。彼女がバズることによって自動的に自分の名前も広まるなら良い儲けだ、と思っていたのだが、まさか私が「ママじゃない方」と呼ばれることになるとは思いもしなかった。略して「じゃない方」と呼ばれ、果てにはどこぞのプレゼンで「オリジナルキャラにも関わらず、共有されなかったため、派生キャラの方が人気が出たバーチャルYoutuber」などと紹介されてしまった。そもそも私はバーチャルYoutuberではないし、元々じーえふママのアバターを使っていたのは私である。怒りを通り越して呆れた。
主にTwitterでのカロリー過多なツイートやYouTubeへの動画投稿をメインにしていた彼女だが、本日の23時から生放送を行うことになった。こんなことTwitterでは言わないが、私自身彼女のファンであるために非常に楽しみこの上ない。一応昨日リハを行なったが(会話はしていない)、随分と緊張している様子であった。是非ともあたたかい目で見守って欲しい。
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肉が美味い。酔ってきたのでここまでとする。